「人脈」で売るな、「技術」で釣るな――新規事業における致命的な「順序のバグ」
「技術は完成した。あとは自分の人脈を使って、一気に売り込めばいい」
新商品や新規事業を立ち上げる際、そう考えているなら注意が必要です。多くの事業が途中で失速する原因は、営業力や知名度の不足ばかりではありません。見込み顧客に売り始めるまでの「順序」を間違えているのです。
技術的に商品が完成しても、事業としてはまだ完成していません。顧客が買うのは、技術の新しさやスペックの高さだけではないからです。
「自社でも本当に使えるのか」
「導入によって、どれほどの成果が出るのか」
「現場に負担や混乱は生じないか」
「社内で投資の妥当性を説明できるか」
顧客が避けているのは新技術ではありません。失敗するかもしれないという不確実性です。どれほど親しい経営者からの提案でも、実績のない商品に大切な資金を投じ、自社が最初の実験台になることを喜ぶ経営者はいません。
だからこそ、最初に目指すべきは売上ではなく、事業の不確実性を減らすことです。
まずは、信頼できる既存顧客や見込み客の中から、最初の三社を「共同実証顧客」として見つける。無料や特別価格で提供すること自体が目的ではありません。顧客とともに、何を検証するのかを明確にすることが重要です。
どの課題を解決するのか。どの指標が改善すれば成功なのか。導入を妨げる要因は何か。いくらなら購入されるのか。同じ成果を他社でも再現できるのか。
ここで集めるべきものは、都合のよい成功談だけではありません。期待どおりに使われなかった機能、現場からの反発、導入が止まった理由も含め、事業仮説を修正するための証拠です。
最初の三社は、売上を作る顧客ではありません。市場で事業を完成させる共同開発者なのです。
人脈の使い方も同じです。昔からの付き合いや義理に頼り、無理に買ってもらっても、事業の実力は証明されません。人脈とは、商品を押し込むためのものではなく、顧客の本音を聞き、実証の機会を得て、市場への学習速度を高めるための資源です。
人脈で売るのではない。人脈を使って学ぶのです。
また、新規事業だからといって、すべてをゼロから作る必要もありません。過去の顧客実績、社員の経験、既存技術、設備、失敗から得た知見など、自社に眠る資源を組み替えればよい。これまでの強みを新たな顧客価値として再定義することで、初期の信用は大きく変わります。
技術で売ろうとしてはいけません。人脈で買わせようとしてもいけません。
最初の三社とともに、顧客が安心して買える理由を作ることです。
新規事業とは、完成した商品を売る仕事ではありません。市場との実証を通じて、売れる事業へと完成させていくプロセスなのです。
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