人事部の真の価値とはなんだろう~制度を完成品として入れるな~

地方の中小企業の社長の方で、大手企業を真似て「ジョブ型」「人的資本経営」を導入し、多額の費用をかけて立派な評価制度をつくった。にもかかわらず、現場は以前とほとんど変わらない。そんな会社は少なくありません。
問題は、制度そのものではありません。経営戦略と現場の仕事、社員の成長がつながっていないことです。
人事の真の価値は、制度を何個つくったかではありません。会社の「できること」を増やすことにあります。
戦略は、現場の「小さな試走」から生まれる
変化の激しい時代、経営戦略は役員室で描いた計画通りには進みません。むしろ、顧客との対話や現場の違和感から生まれる小さな仮説検証の中に、次の勝ち筋があります。
ところが、若手が「こんな提案を試したい」と言った瞬間、
「実績はあるのか」
「失敗したら誰が責任を取るんだ」
と潰してしまう。
これを繰り返せば、社員は学習します。
「余計なことをせず、言われたことだけやるのが一番安全だ」と。
必要なのは、全員を起業家にすることではありません。上司の指示を待つだけでなく、自ら顧客に聞き、小さく試せる社員を増やすことです。
■KPIは「監視」ではなく「学習」のために使え(遅行指標)
KPI管理も同じです。
「今月何件電話したか」「計画との差はいくつか」だけを問い続ければ、社員は数字を守ることが目的になります。
本当に問うべきは、
「顧客のどんな課題を発見したか」
「何を試し、何を学んだか」
です。
失敗を放置してよいわけではありません。しかし、挑戦から得られた学びまで評価しなければ、自走する社員は育ちません。
■戦略・組織・キャリアは「らせん状に相乗的に進化」する
ここが最も重要です。
戦略が変われば、社員に求める役割が変わる。新しい役割に挑戦すれば、人が育つ。人が育てば、組織のできることが増える。そして組織が変われば、会社が取れる戦略そのものが変わる。
つまり、
戦略が人を育て、人が次の戦略をつくる。
これが「らせん的進化」です。
人事とは、この循環を回す経営機能なのです。
明日から経営者がやるべき3つのこと
第1に、人事・総務を現場に出す。
営業同行や製造現場に入り、「なぜ提案が生まれないのか」を自分の目で確かめる。
第2に、進捗会議の一部を「実験と学習の共有会」に変える。
成功だけでなく、「試したが失敗した。しかし、これが分かった」を共有する。
第3に、1on1で社員の「やりたい」と会社の「やってほしい」の接点を探す。
そこに本人の成長と事業成長が重なる仕事をつくる。
■人事の価値を、もう一度定義しよう
人事の価値は、評価制度の完成度ではありません。
挑戦する社員が何人増えたか。
現場から新しい提案が何件生まれたか。
育った人材によって、会社が新たに何をできるようになったか。
ここで測るべきです。
他社の成功事例や流行の制度を、そのまま持ち込んでも自社には馴染みません。自社の歴史、顧客、現場、社員を見ながら、小さく試し、学び、修正する。
目指すべきは、「良い人事制度を持つ会社」ではありません。
「戦略が人を育て、人が次の戦略をつくる会社」です。
そこにこそ、人事の真の価値があります。
最後までお読み頂き、有難うございましt。
まだまだ厳しい暑さが続きます。ご自愛ください。

