完璧な採用設計図を捨てよ ――オランダ戦に学ぶ、中小企業の「資源逆転」戦略

「求人を出しても人が来ない」「採っても辞める」「大手に待遇で勝てない」――。地方中小企業の採用現場は、もはや消耗戦だ。人口減少、人手不足、賃上げ競争。だが、本当に不足しているのは人材だろうか。むしろ問われているのは、「限られた資源をどう組み替えるか」という経営の発想そのものではないか。
そのヒントは、強豪オランダ相手に2度追い込まれながらも、終了間際に追いついたサッカー日本代表の戦い方にある。あの死闘には、持たざる中小企業が採用市場を生き抜くための「資源逆転」の戦略が隠されている。
まず捨てるべきは、「待ちの採用」である。
試合終盤、オランダは5バックで守りに入り、主導権を失った。中小企業の採用にも似た悪手がある。それが、「求人媒体に広告を出し、応募を待つ」という従来型の採用だ。
格上の大企業と同じ土俵に立てば、知名度も給与も福利厚生も不利である。だから必要なのは、待つ側から仕掛ける側への転換だ。社長自らSNSで現場を発信する。社員の紹介を強化するリファラル採用を進める。地域コミュニティや専門学校とつながる。大企業が効率で動くなら、中小企業は熱量と距離感で勝負すればいい。
次に必要なのは、「100点人材探し」からの脱却だ。
後半、日本の流れを変えたのは途中出場の選手たちだった。万能ではない。しかし、「突破力」「クロス」という明確な一芸を持ち、それが噛み合った瞬間、試合が動いた。
採用も同じである。営業もITも管理もできる完璧な即戦力を求めても、多くは大手へ流れる。必要なのは、「欠点込みで一芸を見抜く力」だ。
営業経験は浅くても発信力が高い人。事務は未熟でも顧客との関係構築が得意な人。完璧な人材を探すのではなく、不揃いな強みを既存社員と掛け合わせる。これは「ブリコラージュ(寄せ集めて創る)」の発想である。
そして最後に重要なのが、「65点を出し続ける力」だ。
採用は計画通りにいかない。内定辞退も突然の離職も起こる。しかし、それは失敗ではなく前提条件だ。理想の100点を待つのではなく、手元の人材を再配置し、業務を組み替え、その時々の最善手を打つ。カオスの中で65点を泥臭く積み上げる復元力(レジリエンス)こそ、中小企業最大の競争力なのである。
大企業が資本で勝つなら、中小企業は工夫で勝てばいい。必要なのは完璧な設計図ではない。今ある人、技術、人脈という不揃いな資源を執念で組み替える「編集力」である。その泥臭い積み重ねだけが、他社に真似できない強い組織の背骨をつくる。

