国公立大学の理工系学部で「女子枠」について想う

社長、ご存じでしょうか。

昨今、国公立大学の理工系学部で「女子枠」の導入が広がっています。

「逆差別ではないか」「入学後にミスマッチが起きないか」といった議論もあります。

しかし、この問題を教育政策だけの話として眺めるのはもったいない。人口減少に直面する地方中小企業にとって、これは「自社は、本当に人材市場を使い切れているのか」という経営の問いでもあります。

第1に見直すべきは、自社が無意識につくっている「人材の参入障壁」です。日本では、女性の理数系能力そのものだけでは説明できないほど、理工系への進学には大きな男女差があります。企業にも似た構造があります。「製造現場は男性」「営業は全国出張できる人」「熟練には10年必要」といった前提が、応募可能な人材を自ら狭めてはいないでしょうか。

人手不足とは、人口の問題であると同時に、企業が「どのような人なら働ける仕事」を設計してきたかという経営の問題でもあります。重量物運搬を設備化する、工程を分解する、技能を見える化する、設計や営業の一部を遠隔化する。そうすれば、「採れる人を増やす」のではなく、「働ける人が増えるように仕事そのものを再設計する」ことができます。

第2に、入口を広げるなら、受け入れ側の仕組みも変えなければなりません。これまで採用してこなかった層を迎えても、育成方法、評価基準、上司の関わり方、業務設計が従来のままでは、本人も現場も疲弊します。一部の研究では、入学後・採用後の環境との適合が成果を左右する可能性も指摘されています。重要なのは、入口だけを変えることではなく、成長を支える「組織のOS」を同時に更新することです。

第3に、企業はもっと「現実」を開示すべきです。良い面だけを並べる求人ではなく、「入社3か月後に何ができればよいか」「1年後にどこまで成長できるか」「どんな壁があるか」「給与や役割はどう変わるか」を具体的に示す。求人広告を、会社を良く見せる広告から、入社後の成功可能性を判断できる情報へ変えるのです。

人口減少そのものは企業には変えられません。しかし、「自社で働ける人の範囲」は、経営によって変えられます。

これからの競争優位は、人材を奪い合う力だけではありません。

これまで働くことが難しかった人、応募をためらっていた人、能力を発揮する場を持たなかった人が成果を出せるよう、仕事・組織・事業そのものを再設計できる力にあります。

「人がいない」と嘆く前に、「私たちは、どんな人なら働ける会社をつくってきたのか」と問い直す。

そこから、人口減少時代の経営改革は始まるのではないでしょうか。

今回も最後までお読み頂き、ありがえとうございました。

川添 信

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