「持続可能な開発」の概念と運用の壁

「持続可能な開発(発展)」とは、将来世代のニーズを満たしつつ、現代の世代の欲求も満足させる発展と定義される。1987年に提唱され、2015年には「持続可能な開発目標(SDGs)」として国連サミットで採択されました。しかし、この概念を実際に運用することは容易ではありません。環境倫理学者の吉永明弘教授(法政大学)が指摘するように、「将来世代と現世代の要求のバランスをどうとるか」という問題が生じ、現世代の間での合意形成が難しくなるからです。

多分野で顕在化する世代間問題の具体例
このような現世代と将来世代の利害対立は、様々な分野で顕在化しています。

  • 気候変動問題:東京大学の江守正多教授は両世代の関係を懸念している。気候変動に高い感受性を持つ若者は、現世代が将来世代の人権を侵害していることに心を痛めていますが、その考えゆえに同世代から孤立したり、上の世代から反発されたりすることがある。
  • 社会基盤(インフラ)の維持:高度経済成長期に建設された上下水道や道路などの社会基盤は、現世代が手放す決断を下すのが困難な半面、そのまま維持することは将来世代の財政的な負担となる。
  • 政治・社会保障の議論:政治の世界では減税など現世代の負担減の議論が注目される一方、公的医療や年金といった権利給付の見直しは、現世代の負担増につながるため議論が深まりにくい傾向にある。

合意形成を阻む共通の特徴
これらの問題には、現世代の合意形成を困難にする2つの共通特徴がある。

  1. 負担の直結性:現世代が将来世代に配慮する取り組みは、現世代自身の負担に直結する可能性が高いこと。
  2. 成果の長期性:取り組みの成果が見えるまでに数十年もの長い時間を要するため、現世代の全員が等しくその価値を見出すとは限らないこと。

結論 将来世代への配慮が現世代の具体的な負担になること、そして成果を実感しにくい長期的なものであることが原因となり、現世代における合意形成は極めて難しくなっている。

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